夫婦で世界一周WWKトップページ 世界一周の旅行記 世界の食べ物 世界の宿 旅の家計簿 プロフィール

ネパールトレッキング アンナプルナサーキット1

4月3日〜4月12日

バンコク発ダッカ経由カトマンズ行 4月3日

「4月2日から4月6日までの間、マオイストが全国一斉パンダ(ゼネスト)を呼びかけているので不要不急の場合を除き入国およびネパール国内においては外出は控えるように・・・」
 外務省ホームページに載っていた渡航状況のくだりである。ネパールは、今あまり治安状況がよくない。マオイストによるテロとマオイストと警察や軍との衝突で、結構たくさんの人が死んでいる。つい一週間程前にも、カトマンズで爆弾テロがあって、27人の人がケガをしている。
だが、この外務省のHPの内容を見た時は、時すでに遅しで、僕らのチケットは予約の変更のできないFIXチケットだった。
「カトマンズ行きの飛行機に乗っている乗客、俺たちだけだったりして」
「・・・」
僕たちはそんな会話をしながら空港へ向かった。

バングラディシュ空港の待合ゲートには、何人かツーリストがいた。日本人も2、3人いた。少しホッとする。しかし、また不安がよぎる。「このツーリストたちは、本当にカトマンズに向かうのだろうか?ダッカ経由でカルカッタに行くんじゃないのだろうか?」
小心者の僕は、強がってはいたものの、実は不安でいっぱいだったのだ。
ダッカの空港で日本人と話をした。
「よくこの時期ネパールに行こうと思いましたね。」
「ネパールってなんかやばいんですか?」
話し掛けられた旅人は、不思議そうな顔をしている。
 3人いた日本人のうち2人はこのような反応だった。もう1人は、僕らと同じ、チケット取っちゃったから仕方なく来ました、と言っていた。こんな時期にネパールに来るツーリストは、度胸や根性のある人間じゃなくて、楽天的でおっとりとした、そんなタイプの人ばかりのようだ。

 6ヶ月目にして、今回の旅で初めて飛行機に乗った。空港に着くと、いよいよこれから新たな旅が始まるんじゃないかって思えてくる。飛行機に乗るとそこはもうタイではなく、バングラディシュだった。機内に入ったとたんカレーのにおいがする。機内食は多分カレーなんだろうが、それだけではなく、シートなどに長年染み付いた年季の入ったにおいだ。そして、なにやらお経みたいものが流れる。テレビでは、そのお経に合わせてみみずのような文字が流れている。これは、もしや、コーラン?東南アジアからいよいよ違う文化の世界に入ったんだ。なんだかすべてが新鮮で感動的だ。
 ダッカの空港に着いた。今日はこの街で一泊する。空港の出口には、ダークな肌の色の人々がたくさん群がっていた。闇の中、歯と目が白く浮かんでいる。しかもたくさん。街の灯りもどんよりとねむたげな橙で、タイとは全然違う。道には、リキシャーっていうのかなあ、三輪自転車が乱れ狂ったように走っている。こんなことは、バングラディシュやインドあたりを旅している人にとっては、当たり前の光景なんだろうが、僕にとっては刺激的で楽しくてしかたない。
 バングラディシュ航空が用意してくれたホテルは、僕らがこの旅で泊まったどんな宿よりも高級だった。そして、レストランでは、マトンカレーがサービスされる。機内食を食べてあまり時間がたっていないためか、みんなあまりすすまないようだ。このマトンカレーはすばらしおいしく、これからネパールやインドを旅するとたくさんおいしいカレーが食べれるのか、と思うととても幸せな気持ちになる。ネパールへの不安は、どこかへ消えうせ、寝るのがもったいないくらい、幸福なトランジットナイトだった。(昭浩)

早朝からダッカ市内を走るリキシャー
リキシャーは、早朝からダッカ市内を走る
ダッカ市内を走る2階建てバス
ダッカ市内を2階建てバスが走っていた

カトマンズへ 4月4日

 その日の午前中、僕たちはダッカの街での散歩を楽しんだ後、カトマンズに向かった。
飛行機の窓から見えるヒマラヤは、遠くに見えてもそりゃすばらしいもので、雲の上に、雪山の壁が突き抜けている。体がうずうずしてくる。泣けてくるほどうれしくてたまらないのだ。
 いよいよカトマンズ空港に着陸する。カトマンズで爆弾テロ、そんなことが頭に浮かぶ。着陸する前に、空からカトマンズ市内を見ると、なんの煙か知らないが、2、3ヶ所で煙があがっている。まあ、どこかで何かを焼いているのだろう、そう思い込みながら、心を落ち着かせる。すると、
「オーマイゴッド」と前の方から聞こえてきた。
「何?今の嘆きの声は?外にある煙とその嘆きの言葉は、なんか関係あるの?」
意味不明なその外人の発した言葉で、ざわめく心のまま、ネパールに入国した。

 ネパールの空港の外では、たくさんの客引きが待っていた。普通空港での客引きといえば、タクシーの運ちゃんしかいないものなのだが、ゲストハウスの客引きもたくさん来ている。客引きが多いとは聞いていたけど、想像以上だ。13年前は、客引きなんか誰もいなかった
「タクシー100ルピー」というものもいれば、「10ルピーでゲストハウスまでいくよ」と言うものまでいる。僕らは彼らの勢いのすごさに驚いて、なかなか判断できない。だんだんエスカレートしてきた時、警官が彼らを警棒でなぐりはじめた。しかも、けっこうマジで。殴られた客引きたちは、かなり痛がっていたが、それでもまた群がってくる。そして、また殴られる。「こりゃ、はやく決めないと」と思っているところ、少し離れた所から、「地球の歩き方73ページ」と言う声がした。地球の歩き方を見ると、“ホーリーランドゲストハウス、日本人旅行者に人気の宿、4ドル〜”と書かれている。この客引きについていけば、ゲストハウスまでのタクシー代もタダだし、もし宿がイマイチだったら、次の日違う宿に変更すればいいや、と思い、そこに決めた。

タクシーに乗った後もテロが心配だったが、それは、空港を出て1分もしないうちに吹き飛んだ、飛行場のすぐ近くでゴルフをしている人がいたのだ。このご時勢にゴルフ?外務省のHPの「ストライキ中は、お店が閉まっているので、飲料水や食料は用意しておいた方がいい」って書かれていたのは何だったんだ?街には、子供たちが遊び、人々は普通に暮らしている。ツーリストも街中を闊歩していた。(昭浩)

トレッキング準備 4月5日・6日

(ここから先の日記は、これからアンナプルナ山群一周を計画している人の参考になればと思って、トレッキングしない人にとっては、わかりにくい事もあえて書いてある。トレッキング情報に関しては、カトマンズやポカラで900ルピー(1566円)くらいで売っている文庫本サイズの本を読めば、万全であるが、やはり、行った人の生の声というものが最も説得力ある情報であると思う。)

いよいよトレッキングの準備開始だ。でも、トレッキングの準備っていっても具体的にどうしていいのかよくわからないところが多い。僕たちは、同じ宿にいた人にいろんなことを教わった。これからトレッキングに行く人のためにトレッキングの準備について、少しまとめておこうと思う。
することは、大きく3つ
1、 入園許可証をとる
2、 ガイド、ポーターを雇う場合その手配
3、 必要なものをそろえる
あと、エベレスト方面へのトレッキングの場合、エアーチケットの手配も必要。

1、 入園許可証
優先順位が一番高いものは、入園許可証の取得。これは、アンナプルナ山域入園料というものを払えばもらえる。場所は、イタリアンレストラン「ファイヤー&アイス」のビルの地下1階にカウンターがある。料金は2000ルピー(3480円)。カトマンズかポカラで払っておかないと、現地支払いの場合4000ルピーかかる。土曜日休みで、日曜が午前中のみ営業(要確認)だったと思うので注意が必要。

2、 ガイド、ポーターを雇う場合その手配
ガイド:アンナプルナサーキット(アンナプルナ山群一周)コースの場合、必要なし。道に迷うようなところはない
ポータ―:いると楽できる。もし雇うならガイド兼ポーターがいいと思う。ガイド兼ポーターのネパーリーはガイドのライセンスを持っていない人もいるが、ガイドの必要ないコースなので、ライセンスよりも、そのネパーリーの人柄を重視した方がいい。

僕らは、ガイドもポーターも頼まなかった。トレッキング中いろんなガイドやポーターと出会ったが、すごくいい奴もいれば、感じの悪い人もいる。長い間一緒に過ごさなければいけないので、人柄はとても重要。あんまりおしゃべりなガイドはだんだんうざくなってくるという声もある。美しい景色を堪能しているときにくだらない話ばかりされりゃそう思うわな。

ガイド料:     1日10ドル/770ルピー(ガイドの食事、宿代込み)
ガイド兼ポーター料:1日350ルピー(ガイドの食事・宿代別)
※ ガイドの交通費は、別途
次に僕がトレッキングいくなら、今回のトレッキング中仲の良くなったガイド兼ポーターと一緒にいきたいと思う。その方が楽しいしラクだからだ。

4、 必要なもの(4月上旬:1人分)  ★は、現地調達したもの(レンタルと表記していないものはすべて現地購入)

ネパールトレッキングの持ち物
トレッキングシューズ ★シュラフ(ダウン) レンタル1日35ルピー
カッパのズボン ★ニット帽  174円
靴下3足 ★ジャケット(スキーウエアみたいなやつ)2610円
パンツ3枚 ★手袋(フリース生地の薄い奴)174円
タイツ ★水筒(ペットボトルでもいける。買う必要なし)1305円
水着 ★地図  313円
Tシャツ2枚 長袖Tシャツ(1枚はトレッキング時、1枚は寝巻き)
水泳用タオル1枚 フリース
ハンドタオル2枚 スパッツ
電卓 充電器・充電池(少し大きな村だとコンセントあり)
トレーナー ガイドブックコピー
花札 ヘッドライト(夜トイレ行くとき必要)
日記 薬(傷薬、かぜ薬、下痢止め)
デジタルカメラ ワセリンと日焼け止め(絶対必要)
手帳 貴重品(パスポート、T/C)
電池 筆記用具
南京錠 サングラス(絶対必要)
文庫本1冊 ろうそく(結局使わなかった)
コンピューター シャンプーリンス(トラベルセット)
サンダル 石鹸
ライター 洗濯バサミ5個
綿棒 洗剤
歯ブラシ ひも(洗濯用)
あめ リュック(昭浩70L、映子40L)

5、 高山病について
病については、カトマンズにいる旅行代理店やガイド、道具レンタル屋はみなこういう。
・水をたくさん飲め(紅茶やコーヒーでもいいが水やスープの方が良い)
・・・じっくり登れ
・ガーリックスープを飲め
・高山病になったら高度を下げろ

スコータイ遺跡水を飲むこととゆっくり登ることは、とても重要。ガーリックスープもまあいいだろう。それでも高山病になるときはなる。軽い症状であれば、高度を下げる(もと来た道をもどる)というのは、あまり現実的ではない。

僕は、ダイアモックスという薬にお世話になった。これは、マナンの診療所に行くと3日分を1ドルで買える。(ただし、診療を受けると30ドルかかるので、薬だけ買いに行くこと) この薬は、高度順化を促進する薬で、軽い症状(頭痛)には効くし、高度順化にかかる時間を短縮する。1回1/2錠(爪で半分に割る)を1日2回(朝・夕)服用。副作用として、利尿作用があるので夜中に必ずトイレで目を覚ます。

高山病をあまり経験したことのない人(ネパーリーガイドやポーター)は、ダイアモックスなんて効果ないよ、気休めだよ、というが、使った経験のある僕に言わせると、ダイアモックスはなかなか効果のある薬だと思う。本当は、そういうのに頼らないでいくのがいいのだが、高山病の症状が出たら症状が消えるまでその高度にとどまるしかないのだ。それなら、ダイアモックスでより高度順化の時間を短縮したほうがいいし、毎年高山病で死ぬトレッカーがいることを考えれば、薬で命拾いすることだってあるかもしれないのだ。ただし、アレルギーや持病のある人、何か薬を飲みつけている人は、カウンセリングを受けた方がいい。ちなみにカトマンズで買うと10日分で45ルピー(78円)とかなり安かった。

下に僕の脈拍数を書いた。高度によって脈拍がこれだけ違うと体に及ぼす影響がでてくるのも当然と言えよう。
脈:平地73、マナン(3540m)77、ヤクカルカ(4018m)83、トロンフェディ(4450m)106

カトマンズについてからこの2日間は、準備のためカトマンズの街を歩き回っていた。そして、どうしても13年前のことを思い出しながら、まわりを見てしまう。今はツーリスト街の中心となっているタメル地区、13年前はまだ新しい安宿街でこれからまさにレストランやホテルが増えていくといった状況だった。そのころの中心は、ダルバール広場近くのジョッチェン地区。しかし、ジョッチェンには、もう宿やレストランも少なく、かなり寂しげな様子だ。片方はさびれ、片方は栄える。13年という年月は、街の様子を大きく変えるものだ。たくさんの旅人がいつもくつろいでいた憩いの場所ダルバール広場が、入場料をとるようになったためか、広場でだらだらしている旅人は少ない。いろんな変化に驚きつつも、自分の中の良き思い出の場所を勝手に変えられているみたいで、とてもさみしい。それでも、僕はこの街が好きなのである。(昭浩)

 ツーリストの集まるカトマンズタメル地区
ツーリストの集まるタメル地区
ダルバール広場
ダルバール広場。人は少ない

カトマンズ〜ベシサハール 4月7日

カトマンズ→ベシサハール ローカルバスで6時間 175ルピー

カトマンズのバスターミナルから1日5本、朝6時〜9時の間にバスが出ている。僕らは、7時過ぎにバス停についたが、結局9時のバスしか席がなかったので、バス停で待たされた。
 僕が学生時代ネパールに来たときは、山登りというものをあまりしたことがなかった僕にとって、アンナプルナベースキャンプは、憧れるけど自分には縁遠いところに思えたし、アンナプルナ山群を一周するコースについては、山岳部やワンダーフォーゲル部の人だけに許されるものであって、その時は、僕には行くことの許されない場所のように思えた。2週間以上山の中にいるってことが全く自分の想像外だったし、それは、今だって想像つかない。
 今、そこに僕は向かっている。無理なように思えることだって、行きたいと思い続けていたから、こうしてここまで来れたんだ。そう、僕は確信している。(昭浩)

アンナプルナ・サーキット パンクしたバス
ベシサハールへ向かう途中バスはパンクした
ベシサハールから見たアンナプルナ
ベシサハールから見たアンナプルナ山群

1日目:ベシサハール〜バフンダンダ 4月8日

ベシサハール(760m)→バフンダンダ(1310m) 7時間30分 20.4km

コースタイム(休憩、昼食の時間は除く)
ベシサハール (2:50) クディ (0:50) ブルブレ (1:10) ンガディ (2:10) バフンダンダ 

映子の調子がおかしい。大分軽くしたはずのリュックが重いという。荷物が重すぎたのか?それとも、アンナプルナ一周という20日間にも及ぶロングトレッキングへのプレッシャーによるストレスか?昨日食べたネパール焼きそばチョウメンがあたったか?ついには、歩き始めて3時間程したところにあるクディという村のカフェの机でふせて寝込んでしまった。
「今日は、ここで終わりか・・・」と思っていたところ、
「歩いていれば少しは気分がよくなるかもしれない。」と映子が言うので、そのまま進むことにした。
ブルブレの村までは、車道を歩く。僕らの脇をバスやジープが砂煙をあげながら通り過ぎていく。別に歩く必要のないところを歩いている気がして、前進しているというより、むしろ歩くことによって時間を無駄に費やしているふうに思えてくる。(実際に車でブルブレまで行って、そこからトレッキングをスタートしたというトレッカーは結構いたみたいだ。その話を後で聞いたときは、愕然とした。)

ブルブレの長いつり橋をわたり、ポリスチェックポストでパーミッションのチェックを受ける。映子の調子は少し良くなってきたようだ。そこから、しばらくなだらかな川沿いのトレイルを歩いた後、今回のトレッキングはじめての登りだ。ここから一気に400メートル登って、今日の宿泊地のバフンダンダに向かう。急な登りを登り終えて、そろそろ着くかなあと思ったら、その登りきったところからさらに遠く上の方に道は続いていて、その上に集落が見える。それを見た時は、気が滅入った。400メートルの高度差ってこんなにしんどかったっけ?
後日談になるが、トレッキング中に仲良くなったポーターのシュリーは、今回がポーターとしての初仕事で、このバフンダンダへの登り道を見た時、「俺は、なんてところに来てしまったんだあ!」とアンナプルナに来たことを後悔したらしい。
何度も休み、ようやくたどり着いた、バフンダンダの村の宿では、きれいな芝生のガーデンでフランス人のおじいさんたちがくつろいでいた。ハードな登り道とは対照的なその風景にとまどいと疑問を感じる。
「このおじいさんたちは、本当にここまで自力で登ってきたのだろうか?彼らはこれから、アンナプルナを一周するのだろうか?」
しかし、せっかく苦労して登っても、ここは、カトマンズより標高は低いのだ。それが、悲しい。(昭浩)

アンナプルナサーキットでクディへ向かう途中の川
クディへ向かう途中。このあたりまで、映子の調子はよかった
アンナプルナサーキット・クディから竹の橋を渡る
クディから竹の橋を渡る
アンナプルナサーキット・ブルブレの長いつり橋
ブルブレの長いつり橋
アンナプルナサーキット・バフンダンダまであと少し
この坂を上りきればバフンダンダ
アンナプルナサーキット・バフンダンダの宿の庭
バフンダンダの宿は、ちょっとリゾートっぽい雰囲気

2日目 バフンダンダ〜チャムジェ 4月9日

バフンダンダ(1310m)→チャムジェ (1430m) 9時間20分(内2時間半、昼食兼雨宿り) 15km

コースタイム(休憩、昼食の時間は除く)
バフンダンダ (1:10) ラムジュン (1:00) カニゲオン (2:10) ジャガット (1:30) チャムジェ

バフンダンダは、峠の村である。だから、昨日一生懸命登ったこの峠を今日下りなければならない。僕たちは、これから5400mのトロンパスまでいかなければいけないのに、下らなければいけないなんて、不本意である。しばらく歩くと滝が対岸に見える、緑のきれいな村に出た。カニゲオンだ。そこから、つり橋を渡り、急な登りがつづく。登りきったところで、雨が降ってきた。しかも、雷をともなった激しい雷雨だ。近くのレストランで雨宿りする。ついでに、少し早かったが昼ごはんを食べることにした。

バフンダンダ近く。田園が美しい
ちょろちょろとした落水もいい味だしている
のどかな谷あいの村カニゲオン

僕らは、インスタントのチキンスープとヌードルを注文した。ネパールのインスタントヌードルは、カレー味だった。それは、考えてみればあたりまえのことなのだが、当然のように出てきたカレー味のヌードルは、ここは、インドの隣のネパールだってことをあらためて認識させられるものだった。
しばらく、その少し古いレストランで雨がやむのを待っていたので、このレストランの5人姉妹と仲良くなった。4歳、6歳、10歳、18歳、19歳の5人姉妹の写真をとってあげた。デジカメの液晶モニターで撮った写真を見せてあげると不思議そうに驚き、興味を示し、喜んでいた。映子は、ここぞとばかりに、折り紙を出して鶴を折ってあげた。鶴の折り紙を見るのは、はじめてらしく、「ラムロ(美しい)」といって喜んでいた。

この葉って・・・マリファナ?道中で自生しているのをみかける
雨宿りの場所で子供たちと出会った
雨宿りしながら鶴を折る

 しばらくすると雨がやんだので、レストランの5人姉妹と別れを告げて、再度出発した。2時間以上休んでいたので足取りも軽い。雨宿りした所から2時間程で今日の宿泊予定地チャムジェに着いた。
 チャムジェでTシャツを洗っていると、美人のスイス人から声をかけられた。彼女は、ブリジットといってスイスの田舎で看護婦をしている。とても丁寧でゆっくりとした英語で日本のことをいろいろ尋ねてきた。ルーカスというボーイフレンドといっしょに、今回初めてトレッキングに挑戦するのだそうだ。二人のほかに、ガイドとポーターを一緒にシェアしているアイルランド人とドイツ人が一緒だった。彼らは4人とも30歳前後なのだが、みんな1ヶ月の休みをとってきている。
「簡単に1ヶ月も休みがとれるの?」
と聞くと、なぜそんなことを聞くのか不思議な顔して答える。
「ボスに言えば1ヶ月くらい休めるが、そのかわりその1ヶ月は給料ないんだよ。これは、どこの職場だってそうだよ。」
1ヶ月の休みというのは、ヨーロッパではあまりにも当然すぎることなのだ。うらやましい限りである。
ちゃんと旅行をしようとしたら、やはり一ヶ月は必要だと思う。例えば、日本の社会人がこのアンナプルナを一周しようと思ったら、会社をやめるしかない。僕が以前勤めていた会社では、リフレッシュ休暇というものがあって、4年に一度1ヶ月休める制度があったが、ほとんどの会社は、そんなに休めない。1週間や10日間くらいの休みだとできることに限界がある。1年のうち1ヶ月くらい休める土壌が日本にもあったらいい、と心の底からそう思う。(昭浩)

3日目 チャムジェ〜ダナキュウ 4月10日

チャムジェ (1430m)→ダナキュウ(2300m) 8時間20分 20.8km

コースタイム(休憩、昼食の時間は除く)
チャムジェ (1:00) サットル (1:30) タル (1:50) カルテ (0:30) タラパニ(1:00)バガルチャップ(0:35)ダナキュウ

 チャムジェからは、これまでの川沿いのアップダウンではなく、いよいよひと山を登るそんな様相だ。つり橋を渡ると急な登りが続く。しばらく登ると、谷のすき間から、雪をかぶったピークが見える。これまで、谷の底から見上げていた山の峰々とは、明らかに違う。遠く、高く、白い。ようやくヒマラヤに出会えた。さらに登ると、そこは、小高い峠のようになっていて、その向こうには、広い谷間に乳碧色の川が流れ、その川のそばにはタル村があった。そしてそれらを遠くから見下ろすように雪をかぶったヒマラヤがある。美しい村だ。僕が画家だったら、ここからの構図を絵に描くだろう、そんな眺めに心が躍る。

タルの村
美しいタルの村を望む

 タルの村でパーミッションチェックを受けて、水を買う。アンナプルナには、「SAFE DRINKING WATER STATION」というのがあって、浄水と消毒をした自然の水を売っているところが、トレイルの途中何箇所かある。これによって、ミネラルウォーターのペットボトルのゴミを減らし、トレッカーにとっては、山の中では、めっぽう高いミネラルウォーターを買わなくて済む、というメリットがあって、アンナプルナを管理している政府の団体がやっている。とはいうものの、それでもこの水は、1リットル35ルピー(61円)もする。(値段は高度によって変わり、一番高い所で、60ルピー)ミネラルウォーターがカトマンズで1リットル15ルピー(26円)であることを考えると、それでも高いと思うのだが・・・。
 タルの村を出ると、また川沿いのトレイルを徐々に登る。雲ひとつない天気ですがすがしい。朝食が少なかったので、タルから1時間程歩いた、さびれたレストランでちょっと早めの昼食をとった。これが、まちがいだった。ランチを食べている間にピーカンだった空は、徐々に雲が増えていき、すっかり怪しい雲ゆきになってしまった。

タルからカルテへ行く道中のお茶屋から望む山
タルからカルテへ行く道中にて

ごはんを済まし、再スタートする頃にポツリポツリと雨が降り出した。本降りになる前にできるだけ先に進みたかったので、少し急ぎ足で歩く。一時はやみかけた雨は、どういうわけか、あられとなって僕らを打ちつける。空腹に負けて、フライドライスを食べてしまったばっかりにこんな目にあってしまったんだ。岩陰であられがやむのを待ってからまた歩き始めたが、タラパニを越えたあたりからまた雨が降り出した。ここらあたりは、それ程アップダウンがなくて、楽ではあったが、この雨に打たれて、ダナキュウに着いたときは、体は冷え切っていて、鼻が出はじめた。風邪の前兆である。その日は薬を飲んで早めに眠りについた。(昭浩)

4日目 ダナキュウ〜チャーメ 4月11日

ダナキュウ(2300m)→チャーメ(2670m) アッパーウェイ(上の道) 5時間30分 16km

コースタイム(休憩、昼食の時間は除く)
ダナキュウ (2:00) 丘の上 (1:00) タンチョック (1:15) コト (0:45) チャーメ

 風邪をひいたせいか、鼻水がでる。日本だったらティッシュでかむのだろうが、ここでは、もっぱら「手ばな」である。鼻水を直接手でかむ。手についた鼻水は、手を振って払い落とす。(僕は初心者なので、こんな感じだが、ネパーリーたちは、鼻をかんで直接タンを吐くように地面に鼻水をたたきつける。)汚れた手は、タオルで拭く。汚くなったタオルは、水で洗う。ティッシュを使わない。なんて自然にやさしい習慣なんだろうって思える。
 ダナキュウの村を出てすぐ、小さい橋を渡ったところで分かれ道があった。地図にも、持ってきた資料やガイドブックのコピーにもそんなところに分かれ道があるなんて書いていない。上の道を指す看板には、「マナスルやアンナプルナのいい眺めが見れる!」と書いてあったので、登る道を選んだ。そして、それは正解だった。2時間も登り続けたその途中では、この道を選択したことを後悔したが、森の中から抜け、登りきった丘の上にでると、そこは、ヒマラヤに四方を囲まれた、360°パノラマビューが広がっていた。東の方向には、マナスルらしき山も見える。前も後ろも右も左もヒマラヤ。これぞアンナプルナ山群一周コースの醍醐味じゃないだろうか。

ネパールのトレッキング中の朝食
トレッキング中の朝食はだいたいこんな感じ
ダナキュウあたりのマニ車
ダナキュウあたりからマニ車が見られる。チベットのエリアということか
マニ車
健康と無事を祈って、マニ車をまわす
ヒマラヤ
ヒマラヤに包まれている!そんな気分が楽しめる
マナスル山群
高度8000m以上のマナスル山群をバックに

 今日は短いコースだったので、13時には、今日の目的地のチャーメについた。ここチャーメは、狭い谷間の村で、その河原には温泉がある。僕たちは、このチャーメの温泉をとても楽しみにしていた。ここに来れば温泉に入れる、それが僕らの支えであった。しかし、その温泉といったら、河原の石のすき間からちょろちょろと熱いお湯がでているだけ。ベルギー人のおじさんは、そこにパンツ一丁ですわって、洗濯したり、体を洗ったりしている。僕は、せっかくだから足だけつかってみたが、映子は、
 「こんなもの温泉とは認めん」と半怒りで宿に戻っていった。

 それに、してもここは、寒い。たかだが2670mの標高なのに。食堂にいっても寒い。部屋に戻っても寒い。外はもちろん寒い。こうなると安住の地は寝袋の中だけになってしまう。でも眠たくない。上を見上げるとラルジュンとアンナプルナ2が見えるが、しばらくは感動していても、ずっとは見てられない。荷物になるので、一冊ずつしか持ってこなかった本は、ほとんど読み終わり、コンピューターは、バッテリーの電池がほとんど残っていない。でも、考えてみれば、僕らは美しい山を堪能しにここまで来て、こうしてアンナプルナに囲まれた贅沢な場所にいながら、寒いだの暇だの、なんて勝手なことをいっているのだろうと思う。
結局、ワットポーで習ったマッサージを映子に施すことにした。そうすれば、マッサージされるほうも、するほうも多少はあたたかくなるからだ。でも、このマッサージをやるときいつも思うんだけど、自分で自分にマッサージはできないんだよね。これってあたりまえのことでわかっちゃいるけど、どうにかならないもんかなあ、といつも思う。(昭浩)

川と山が美しいチャーメ
川と山が美しいチャーメ
チャーメの村
チャーメの村
村の近くの河原にある温泉
村の近くの温泉?ちょろちょろ熱いお湯が出ているだけだけど

5日目 チャーメ〜ピサン 4月12日

チャーメ(2670m)→ピサン(3200m) 5時間35分 20km

コースタイム(休憩、昼食の時間は除く)
チャーメ (2:00) バラタン (1:50) ドゥクレポカリ (1:00) ピサン

 映子の足取りは軽かった。昨日のワットポー効果だろう。僕は、風邪気味のため、足取りは重い。途中、地すべりしていた箇所を横切る。川まで30mくらい一気にキレ落ちているところで、ちょっと怖い。岩壁と岩壁にはさまれたバラタンの村を通り過ぎ、右の岩壁沿いの道を登る。つり橋を越え、1時間ほど急な登りが続く。すると、再び視界が開ける。そこが、プカールプカーリだ。そこから、針葉樹林の森を抜けると今日の宿泊地ピサンの村。

チャーメからの村を出たあたり
チャーメからの村を出たあたり
美しい谷の道
チャーメからは、美しい谷の道
美しいヒマラヤ山
毎日美しい山が見れてしあわせだ
 ヒマラヤの見えるカフェ
ヒマラヤの見えるカフェでランチ。贅沢な時間
ネパールトレッキング中のお昼ごはん
じゃーん。今日のお昼ごはん

ピサンの村は、アッパーピサンと呼ばれる、山の斜面の上にある村と、ゲストハウスなどが、集まるロウワーピサンとがある。ほとんどのトレッカーは、高度順応のため、150mほど高い、アッパーピサンまで散歩に出かける。もう高山病の症状がでてきてもおかしくない高度なのだ。アッパーピサンで、アンナプルナ山群で二番目に高い山、アンナプルナ2をながめる。ここから見ると、その7939mのピークが近くに見える気がする。
 宿にもどって、仲良くなったポーターのシュリーとたわいのないおしゃべりをしていたのだが、少し頭が痛くなってきた。高山病?でも3200mの高さで高山病には、今までなったことがないし、時間をかけて、ここまで高度を上げてきているので、まさかここで高山病にはなるまい。ずっと英語を聞いていたからかもしれない。または、風邪が悪化したかじゃないだろうか。その日は、高山病に効いて、しかも体力回復にもいい、ガーリックスープを2杯も飲んで、風邪薬も飲んで、寝た。(昭浩)

土色のピサン
土色のピサン
ピサンの村の宿
ピサンの村の宿
ピサンの宿の部屋
部屋は寒くて、いられない
ネパールトレッキング中に出会ったスイス人カップル
トレッキング中に出会ったスイス人カップル
前ページ 次ページ
ホーム 旅行記 食べ物 旅の宿 家計簿 プロフィール
World Wide Kawa All Rights Reserved